閃光のプレリュード page 7/24

閃光のプレリュード

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概要:
閃光のプレリュード

5本出しチタンマフラーを奢っているので、そのエグゾーストノートは朝の寝ぼけた空気を鋭く切り裂いてゆく。減速時に発生するバックファイヤーも健在だ。この車を仕上げるために瀧本は救急病院の当直を何度経験したか数えきれない。ふと空を見上げると、高層には馬毛の筆で掃いたような繊細な巻層雲が一面を覆っていたが、その遥か後方に見え隠れする積乱雲の変種ベール雲を通して強烈な紫外線を発する真夏の太陽が顔を出し、三角波のちらつく東京湾に巨大タンカーや砂利運搬船が長い影を作っていた。「やれやれ、今日も焼け付きそうな一日が始まりそうだな。」とエアコンの装備されていないコックピットの中で一人溜息をつき、仕方なく運転席側のウインドウを開けようと手動ハンドルを反時計回りに三回転させる。風を流したいのだが、サベルト製の四点式シートベルトを装着しているせいで、助手席側の窓を開けようにもハンドルに手が届かない。ウエッジシェープの効いた、イギリス車らしからぬその立姿に惚れ込んだ男は彼一人ではないが、製造して三十年を越える神経質なスポーツカーを新車当時の性能を維