閃光のプレリュード page 9/24

閃光のプレリュード

このページは 閃光のプレリュード の電子ブックに掲載されている9ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
閃光のプレリュード

7に間に合わせるべく、国際線ターミナル駐車場に向けて、出発予定時刻の三時間も前に自宅マンションのある日本橋馬喰町のランプから高速に入っていた。四〇分近くもかかって、流していたお気に入りのハワイアン歌手イズラエルのCDが最終曲の〝OVER THE RAINBOW〟もエンディングに近づき、やっとこのトンネルの入り口に差し掛かり、前方に連なる大蛇のような赤いテールランプの車列を視界に入れた瞬間、上空九時方向に件の積乱雲のはるか手前をほぼ東から西へと向かう、一瞬飛行機雲と見紛う一筋の白煙と、それに続く眩いばかりの閃光が彼の視野に飛び込んできた。墜落事故だ、と直感した。この日ぐらい東京港トンネルの長さを恨めしいと思ったことはない。渋滞の最後尾についたままトンネルに吸い込まれた瀧本のTR7は、両足で瞬時にヒール・アンド・トゥを決め、左手でマニュアルミッションのギアを一気に四速から一速に落としたすぐ後、ダウンヒルのちょうど中程でスピードメーターの針がゼロマイルを指した。